「健康診断の結果が返ってきたけど、色々書いてあって何が悪くて何に気をつければ良いのか分からない」
「再検査って書いてあったけど仕事が忙しくて後回しにして放置している」
健診や人間ドックを受けたものの、受けっぱなしになっている方は多いと思います。
採血で痛い思いまでして、場合によってはお金を支払って調べた方もおられるのに、活用しないのはもったいない事です。
結果が得られた後は把握して、ご自身の健康に生かせるようにしましょう!
このページでは、健診で引っかかりやすい項目に関して、簡単に説明させて頂きます。
目次
➀ 血圧が高いと言われた方
高血圧とは、安静状態で血管に掛かる圧力が慢性的に高い状態です。
圧力が高すぎれば太い大動脈や脳の血管が圧力に耐えきれず、破れてしまいます。放置すれば自覚症状がないまま、病状は静かに進行し、気づいたときには脳梗塞や心筋梗塞、腎臓病、動脈硬化などになって、寝たきりや認知症の原因にもなり、最悪の場合は命を落とすこともあります。
お薬の服用を開始したら一生飲み続けないといけない、と思う方もいるかもしれませんが、早く治療をすれば血管の劣化を早くに食い止められ、お薬を止めることも可能です。
日常生活で気をつけることは「塩分を摂りすぎない食事」と「ストレスを溜めない」こと、そして「安眠」です。家や職場でも機会ある毎に計ってみて、どのようなタイミングで血圧が上がるのかを知っておくと安全に生活できるでしょう。
➁ コレステロール(LDL,TG)が高いと言われた方
コレステロールと聞くと悪者のように思われがちですが、実は細胞の壁やホルモンの合成には無くてはならないものです。
コレステロールにはいわゆる悪玉と言われる『LDLコレステロール』、善玉といわれる『HDLコレステロール』があります。この2つのコレステロールの比率が崩れ、『LDLコレステロール』が過剰になると動脈の内壁に蓄積され、動脈壁が硬くなり脆くなります。放置すると脳梗塞や心筋梗塞の原因となり、危険です。
日常生活で気をつけることは炭水化物・蛋白質・脂質をバランス良く摂取することと、野菜など線維を多く含むものも食してください。もちろんお食事だけで無く運動の継続も重要です。
また、血液検査をする際、お食事の影響を受けやすいので、半日ほどの絶食後の血液検査を複数回受けた上で服薬が必要か否かを判断します。
➂ 尿酸の値(UA)が高いと言われた方・痛風の恐れがあると言われた方
尿酸値が高いと言われても、痛風発作を起こしていないからいいやと放置している人もいらっしゃいますが、高尿酸血症は関節だけの病気では無く全身の病気と考えてください。
尿酸値が 7.0mg/dLを超えた状態が長期化すると尿酸が結晶化し、全身で悪さをします。痛風発作、痛風結節そして最悪では痛風腎を引き起こし腎臓の機能を低下させ透析が必要な状態にもなりかねません。
また、尿酸は尿路結石を作ります。尿酸のもとであるプリン体を含む食品を多く取ると,尿中の尿酸濃度が高まり尿酸が結晶化しやすくなります。
夏場には発汗により血中尿酸濃度が高まりやすいので十分な補水を心がけてください。
お食事や運動で尿酸値をコントロールすることが出来ますので、これも生活習慣病と考えた方が良いでしょう。
➃ 腎臓の数値(Cr,BUN クレアチニン,尿素窒素)が高いと言われた方
腎臓は単なるオシッコ生成器ではありません。腎臓は細い血管の集合体であり、水分調整や老廃物の排泄だけで無く血圧の調整をしたり血液を作る刺激を与えるホルモンを生成したりしています。
腎臓の機能が低下しても最悪の状態になるまで自覚症状を現さないので、注意が必要です。
そして腎機能が一度低下すると元に戻りにくく、改善させるお薬は無いといっても過言ではありません。なので早めに医療機関を受診し、適切な治療や生活指導を受けてください。
日常生活では腎臓に多大な負荷をかけるナトリウムの多いお食事や、水分の取りすぎも腎臓の負担となるのでご注意ください。
➄ 血糖値(BS,HbA1c)が高いと言われた方
血糖は細胞のエネルギー源ですが、多すぎてもいけません。高血糖はインスリン分泌の低下が主な原因です。これが長期にわたると糖尿病となります。
血糖値が高い状態が続く事で、血管を傷つけ、将来的に心臓病や、失明、腎不全、足の切断といった、糖尿病の慢性合併症がおきてしまうため、早めの対応が必要です。
また、血液検査の一つの目安としてHbA1Cがあります。これは、過去一月ほどの平均血糖値を表すため、検査日の血糖値が低くてもHbA1Cが高値であれば、糖代謝異常が潜んでいると考えてください。
薬物療法が必要になる前に定期的に体重測定を行い、食事の摂取量や、自分の指示カロリーも確認しましょう。そして適切な運動を継続して行いましょう。
➅尿の異常(尿蛋白や潜血)を言われた方
尿の検査は、痛みも無く簡単に出来る検査ですが、得られる情報は多くあります。
通常、尿に蛋白や糖、血液などの成分は出てきませんが、これらが出てきたら腎臓の機能障害を表します。その原因は糖尿病・高血圧など生活習慣病であったり悪性腫瘍であったりと、原因は様々です。腎臓が踏ん張りきれなくなったときに初めて異常を呈しますので、尿検査で異常値が出たら早めに再検査や治療を受けましょう。
腎臓の働きが低下した状態での日常生活は、規則正しい生活を送る事です。また、普段から肝臓に無理がかかる生活を送らないことが、腎機能低下の進行を抑えます。
➆ 肝臓の異常(γGTP,ALP,AST,ALT,ビリルビンが高い)を言われた方
肝臓は人が生きていくために必要な成分を作ったり、解毒作用を示したりと生体内の重要な工場とも言われる臓器です。肝臓の機能を低下させるのはアルコールだけとは限りません。健康のために飲んだ健康食品が肝機能障害を招くこともあります。
肝機能検査で異常があったら、原因検索をして可能ならば悪化要因を排除しましょう。例年と同じだから大丈夫などと即断せずにご相談ください。たばこやアルコールは肝臓にとって全く良いことはありませんので、禁酒・禁煙が必要です。
➇ 貧血(血色素量,赤血球数,ヘマトクリット等)と言われた方
貧血は、酸素を運ぶ赤血球内のヘモグロビンが減ったことをいいます。原因は慢性の出血や血液産生の減少などさまざまです。
ヘモグロビンが減った状態で生活すると、各臓器に十分な酸素を供給することが困難になります。更には酸素を含んだ血液を全身へ運ぶために、心臓は多くの血液を送る必要があります。心臓にとって多大な負担になり、血液自体の病気でも貧血になりますが最も多いのは偏食や月経過多による鉄欠乏性貧血と呼ばれる慢性の鉄不足です。この場合、鉄剤の服用で症状はかなり改善されますが、お食事内容の見直しが最も大切です。貧血があると疲れやすくなるので、運動不足と早合点して運動をする方がいらっしゃいますが、運動により心臓への負担が増えるので危険です。まずは原因検索をし、改善してから運動しましょう。
➈ 膵臓の数値(アミラーゼ,リパーゼ)の異常を言われた方
膵臓は消化酵素やインスリンの分泌機能がある器官です。肝臓同様、膵臓も不調があっても自覚症状が表れにくい、物言わぬ臓器ですので、異常に気付きづらいのが正直なところです。血糖値の異常を除いては血液だけではなかなか診断が困難です。まして、悪性腫瘍を疑った場合にはCTやMRIなどの画像診断が必要となってきます。膵臓は胃の裏側、背中の方にあるので、おなかから背中にかけて変な感じがして痛身を感じてからでは手遅れになることも多いのです。よって検査異常値を指摘されたら早めの受診をお勧めします。
最後に
健康の増進のためには医療も食事も本質的に同じで、ともに重要です。
また、全ての臓器は単独で機能しているわけではありません。其々が関連を維持しながら動いているので、「異常値は一つだから自分はまだ大丈夫」と判断してはいけません。
検査結果は検査値の推移から未来を推測するものなのです。毎回この値だからと安心していては落とし穴に落ちることがありますので、異常値を指摘されたら早目に再検査、必要なら治療を受けられることを強くお勧めします。
信州会クリニックでは、これらの検査はもちろん、健診や人間ドックの結果説明を詳しく解説してほしいという方も受診可能ですので、お気軽にご来院下さい。