冬至が過ぎるとはや大晦日である。一年を反省するかのような文章を書くようになって久しい。反省と言うより回顧録であるが来る年に備えて書いている。
1.令和問題
今年は、人生の半分近く親しんできた元号が新たに変わった年である。個人の人生には何ら影響はないが、仕事上とくに診療記録並びに診療報酬請求業務においては暫しの期間混乱があった。
次の元号まで生きているかどうかはわからないが、無事に迎えられるようにと願う。
2.新しい職員
この5月6月で新しいパートタイマーに代わった。非常に若い二人なのだが期待以上の仕事ぶりである。よく受診者から、職員は容姿で選ぶのかと聞かれることがある。それぐらい二人共美人である。街ですれ違えば振り返るであろう。そんな一人は黒髪の和風美人で、もうひとりは現代風美人である。二人共美人であるが気さくで待合室では受診者と歓談し心を和ませることがうまいおかげで、私も職員もストレスフリーで仕事ができている。開院以来一番の安寧に過ごせていることは誠に嬉しい限りであり二人に感謝している。なお、二人の本職やスキル紹介は本人たちの承諾を得ていないのでお預けである。
補)十年以上の協力関係にある美魔女は半世紀以上生きているが、出会った頃とその容姿体型には変わりない。今も月に数日手伝いに来てくれているので彼女のファンはご安心を。
3.新型 注射用臍帯胎盤羊膜パウダーの完成
数年来臨床実験として臍帯胎盤パウダーを皮下注してきた。半年ほど前にやっと超高純度高濃度臍帯胎盤羊膜パウダーが完成した。注入中の痛みはほぼ皆無であり注射後の発赤や疼痛など副反応事象は起きていない。原材料の重量比からも考えて内容成分はほぼ胎盤と同じであると考えてもよいのだが、極微量の臍帯や羊膜重要成分が含まれるのがミソである。注入対象者は高度の長期疲労倦怠、関節痛である。もちろん無効に近いという方もいるが確実に有効と認め注射を繰り返す方が多い。
4.医療機械 (測定器)壊れる
この半年に、長年使用してきた医療器械である血球測定器と血管硬度測定器が相次いで使用不能になった。血球測定器は炎症反応測定も含め約4分で結果が出るという便利なものであり、この結果をもとに処方内容を決定するというのは受診者からも好評であった。血管硬度測定装置は高血圧患者の処方内容決定には重要な武器である。即ち上腕で測定した血圧のみで処方内容を決定するのは腑に落ちない。なんとなれば、血圧は血管抵抗と血流量と密接な関係にあるので一つの因子に過ぎないからである。簡便である上腕測定血圧ですべてを分かったようなことを言われているのではないだろうか?そもそも聴診器で聞くコルトコッフ音は血流雑音を聴き、器械式の自動血圧計は動脈の拍動を測定している。いわば、全く別物を同じ土台で論じること自体怪しいではないか。これ以上書くと専門家を名乗る方々から酷評をいただくことになるので、単に私の偏見であるとしておこう。
医療機器導入にはリースというのは過去の遺物である。何しろ契約破棄するまで延々と高額支払いを続けなければならいばかりか所有権も得られない。また契約停止には莫大な費用がかかる。リースほど馬鹿らしいものはないので、階下の銀行に融資してもらった。これにはひと悶着あったが今は事なきを得ている。もちろんここには書けない様な問題点はいくらでもあったのも事実であるが。
5.特殊診療
年齢とともに忘れるは易し覚えるは難しなのだ。そこで落ち穂拾いのように残存する知識をかき集め診療しているのだが、受診者に喜んでいただけることもあるので、いくつか紹介していくことにする。いわゆる西洋医学とは異なるのだが、漢方薬の処方や遠絡療法という経絡回復法である。
専門家ではないのであくまでも独善的な報告ななることはお許し願いたい。
抑肝散という漢方薬
還暦間際の男性、会社では中心的な存在であるが元々気短なこともあって出社するとイライラが募ると漏らしてくれた。高血圧の一因でもあると推測し抑肝散を処方することにした。効果覿面で出社直前に2包服用するとイラだちが起きなくなった。血圧も安定してきた。その上仕事が捗るようになった喜んでくれた。その後は抑肝散の愛用者である。
定年に近い男性、彼も抑肝散を事に応じて服用している。即ち宜しくないクライアントと交渉する前には必ず服用するという。
30代半ばの女性、社内プレゼンでは毎回上気してしまい口調もしどろもどろで全身汗だらけとなりさらに焦ってまともにプレセンができない。抗不安薬が必要であると、訴えてきた。
彼女にも抑肝散を処方し、プレセン15分前に2包服用するように提案した。後日、満面の笑みでプレゼン大成功と知らせてくれた。
司法試験受験の男性、あがり症で困っていた。試験開始の20分前に抑肝散を2包服用させた。試験直前に会場から相談電話があった、周囲の受験生と違い落ち着きすぎているのだが問題ないかどうかということであった。リラックスして実力が出るから心配無用と答えた。
その他の症例も多々あるが、いずれも西洋薬の抗不安薬などいわゆる精神安定薬を処方するのが常套手段かもしれないが、抑肝散のメリットは単に脳の興奮部分だけをカットし平常時の脳活動レベルを落とさないことである。私が抑肝散は受験生の精神安定薬と言っている由縁である。
どんな診療でも当たり前のことだが、通り一遍の問診をして処方を決定するのではなく、余談の中から真意を見つけるよう努力しているとたまにはヒットするので受診者から喜ばれるものである。そして漢方薬の応用範囲は広いと感心するばかりである。
遠絡療法
40代男性、背部痛で数年以上整形外科はもちろん鍼灸や整体に通い半ば除痛を諦めていた。受診目的が他の事であったので雑談の中から拾った症状であった。5分でできる遠絡療法を行った。治療終了後彼は狐につままれたかのような驚きを示した。長年に渡り困り果てていた痛みからわずかの時間でほぼ完全に開放されたからである。治療時間は極々短時間であったので格安料金を頂くことにした。彼は、3ヶ月後海外出張から戻り今度は腰痛の相談に来た。この時には
前回の背部痛のことを忘れていたという。時間をかけ診察し、治療ポイントを見極め数分間の治療を行った。今回も大変喜んで帰って頂けた。
40代女性、多関節痛で名のある大学病院を受診しているが原因不明と言われるだけであり検査の繰り返しに辟易し相談に来られた。国際結婚のストレスがあるのかもしれないが鬱々とする日が多いとも言ってくれた。15分程の治療の後、関節痛の半減と何よりも気分爽快になったことが嬉しいと喜んでくれた。
私自身のこと。年末処理が終わり大量の荷物を紙袋に詰め持ち紐を左手で鷲掴みにした。手の大きさや握力は決して並以下ではないと自負していたのだが、部屋に着いて休憩のつもりで大好物のピーナッツの袋を開けようとしたが左親指に力が入らず袋を摘めないのであった。年齢の割には荷物が重すぎたかと思い自然回復を期待したが、1時間経っても症状に変化はなかった。もしや脳に何かが飛んだのかとも疑った。そのとき、遠絡療法を自分でしてみてはと思い立ち20秒ほど自己で牽引瀉法を行った。瞬時にして指の筋力が戻った。教えを頂いた故 高先生に感謝感謝!
無為に一年を過ごしてしまった
今まで生きてきた年数よりも残りの年限の方が遙かに短いのにいつもの悪癖が非日々を無駄にしている。
中途半端や怠惰怠慢という文字で埋め尽くされている私の辞書に勤勉努力という文字を加えねばならないなとひとりごつ。
最後に、この一年大禍なく過ごせたのは、ご来院くださる受診者の方々や診療にまつわる業者の方のご協力、職員そして私を理解してくれている家族や親戚に感謝致します。
永井 一成