化粧水は必要か?──「水商売」としてのスキンケア
世の中には「化粧水は肌に潤いを与える」と信じて疑わない人が少なくない。だが本当にそうだろうか。
化粧水の成分表を見れば、大部分は水、少しの保湿剤、そして香料。つまり「潤いを与える」というよりも、「一時的に濡らす」に過ぎない。
化粧水の正体──蒸発する水の儀式
肌に吹きかけられた水分は、やがて空気に吸い込まれる。角層は膨らみ、一瞬だけ柔らかく見えるが、その後は逆に乾燥を促進する。
植木鉢に霧吹きをかけて「水やりをした」と思い込むようなものだ。数分後には土がひび割れ、植物はしおれる。
化粧水もまた、この「水商売」の範疇を出ない。
本当に必要なのは「フタ」
肌の乾燥を防ぐ鍵は、水分を与えることではなく「逃さないこと」である。
皮膚科学的に正しい順序は単純だ。
- ぬるま湯での洗顔(過剰な界面活性剤は不要)
- 直後に保湿剤でフタをする(ワセリン、セラミド、ヘパリン類似物質など)
これで十分である。化粧水を挟む必要性は、実のところほとんどない。
医薬品クリームと化粧水の相性
患者からよく質問を受けるのは「ステロイド軟膏やヘパリン類似物質クリームの前に化粧水を塗るべきか?」というものだ。
答えは明快である。不要、むしろ推奨しない。
化粧水で一時的に角層を膨潤させれば、薬剤吸収が過剰になり、刺激や副作用のリスクが高まる。医師の処方意図を歪める行為に等しい。
結論──化粧水は「観客の拍手」
もちろん「化粧水が好きだから使いたい」という嗜好を否定するつもりはない。スキンケアには文化や儀式性の要素がある。
だが、皮膚科学的に言えば、化粧水は主役ではない。舞台に立つのはクリームや保湿剤であり、化粧水はせいぜい観客席からの拍手に過ぎない。
それを「絶対不可欠のステップ」と信じているなら、それこそマーケティングに魂を売り渡している証拠であろう。
まとめ
- 化粧水は必須ではない。多くの場合「水分蒸散防止」という名の幻想。
- 本当に必要なのは「フタ」をする油性成分や医薬品クリーム。
- 医薬品クリーム使用前の化粧水は不要、むしろリスクとなり得る。
スキンケアの正解は、シンプルであるほど皮肉に満ちている。
「水仕事」にうつつを抜かすより、冷静に皮膚科学を見直すべきだ。
とひとりごつ