ワクチンとは

新型コロナウイルス感染症が広がり約1年が経ちワクチンの接種も始まりました。
最近患者様から質問の多い「そもそもワクチンって?」という疑問に答えていきたいと思います。

ワクチンとは何か?

ワクチンとは細菌やウイルスなど眼には見えない病原体を駆逐できるように体に免疫力を作らせるための薬です。

ワクチンそのものが病原体を攻撃するのでは無く、病原体が体内に入ってきた時に闘う準備をさせるために接種します。
ワクチンを接種したからといってすぐに病気にならないというわけではなく、約2週間前後で免疫力が得られます。

インフルエンザウイルスや新型コロナウイルスは変異を繰り返すウイルスです。
なので、ワクチンを一回打てばずっと効果があるわけではなく、毎年接種が必要となります。

ワクチンの種類

いくつか種類がありますが、日本では主に生ワクチン不活化ワクチンが使われています。

生ワクチン

ウイルスや細菌の毒性を弱めて作成されたものです。

日本で使用される生ワクチンは、経口生ポリオワクチン、BCG、麻しん・風しん(MR)混合ワクチン、みずぼうそうワクチン、おたふくかぜワクチン、ロタウイルスワクチンがこれにあたります。

不活化ワクチン

不活化ワクチンは、免疫をつくるのに必要な成分を取り出して毒性をなくして作ったものです。

不活化された細菌やウイルスは体内で増殖しないため、数回接種する必要があります。インフルエンザや新型コロナウイルスのようなRNAウイルスは変異を起こしやすいので、毎年接種の必要が出てきます。

日本で使用される不活化ワクチンは、ジフテリア・百日せき・破傷風・不活化ポリオワクチン四種混合ワクチン(DPT-IPV)、ジフテリア・百日せき・破傷風三種混合ワクチン(DPT)、ジフテリア・破傷風二種混合ワクチン(DT)、日本脳炎ワクチン、インフルエンザHAワクチン、ヒブワクチン(インフルエンザ桿菌b型ワクチン)、小児用13価肺炎球菌ワクチン、子宮頸がんワクチン、A型肝炎ワクチン、B型肝炎ワクチン、不活化ポリオワクチンなどがこれにあたります。

トキソイド

病原体の毒素を抽出、無害化したものをワクチンとして接種しています。
不活化ワクチン同様免疫力がつきにくいので複数回の接種が必要です。
日本では、四種混合に含まれる「破傷風」のみがトキソイドワクチンです。

核酸ワクチン

最近臨床応用された核酸ワクチンは人での使用経験がありませんでした。これまで研究段階であったものが、新型コロナルイルス感染症の蔓延が後押しとなったのです。核酸ワクチンにはRNAワクチンとDNAワクチンがあります。核酸ワクチンはウイルスや細菌そのものやタンパク質を使うのではなく、タンパク質の設計図となる核酸を体内に接種して、有効成分となるタンパク質を人体内で作らせることにより免疫反応を誘導します。

ワクチンの接種方法

ワクチン接種は、皮下注射と筋肉注射があります。
薬液を体のどこに注入するかの違いです。
皮下注射は「皮下組織」に注入、筋肉注射は皮下組織の下の「筋肉」に注入するものです。

◆筋肉注射は皮下注射よりも痛い?

針そのものによる皮膚の痛みは、皮下注射、筋肉注射に差はありません。

皮下注射の場合は、薬液が入る部位に脂肪組織が多ので注射液が注入された圧覚(組織が押し広げられる感覚)が弱く、薬液注入中の痛みを感じにくいと考えられます。

一方筋肉注射は、筋膜で覆われ、筋肉組織がみっちり詰まった筋肉内に薬液を注入します。

さらに筋肉を覆う筋膜は、圧変化に敏感に感じるようにできています。
そのため、注射で薬液を注入しているときの痛みは、筋肉注射の方が痛いと考えられます。

◆皮下注射と筋肉注射の効果・副反応
皮膚注射の効果・副反応

皮下注射は、脂肪組織に血管が少ないため薬液がゆっくり吸収されます。そのため、効果発現も筋肉注射に比べて遅く、穏やかに効果が持続します。

しかし、薬液が皮下組織に長時間存在することで、注射部位の腫れや炎症などを引き起こしやすいとも言われています。

筋肉注射の効果・副反応

筋肉注射は脂肪組織より血管が豊富な筋肉組織の中に薬液を注入するので、皮下注射に比べて吸収が速くなり、効果発現が速くなります。

注射後の局所の腫れや炎症が長引かず、接種後の痛みが少ないこともメリットです。
更に、抗体産生も皮下注射より優れているので、ワクチンの本来の目的を達するためには筋肉注射の方が有利だといえます。海外でのワクチン接種は筋肉注射が主流です。

新型コロナワクチン副反応

厚労省の新型コロナウイルスワクチンを先行接種した医療従事者約2万人を対象にした副反応調査によると、1回目よりも2回目の方が、発熱や全身倦怠感、頭痛の症状が出現した人の割合が高く表れました。

また、副反応の発現頻度は若年者や女性で高く、高齢者では低い傾向がみられるようです。

最後に

感染症のワクチン接種の目的は個々人を守るとともに、感染拡大を抑制するという大きな目的があります。

少しでも早くインフルエンザワクチンのようにできるだけ多くの方が接種できる状況になることを期待しています。

 

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